歯周治療の始まり

 前回、「歯周病の歴史」のなかで、歯周病との付き合いは人類が始まった頃にさかのぼることを書きました。今回はその治療や予防の方法がいつ頃うまれたかについて、整理してみました。
 歯の痛みといえば、歯周病では数百万年、むし歯でも数万~数千年の間、人々を苦しめてきたわけですが、紀元前ごろ歯痛のためにしていたことは、祈祷を捧げることくらいでした。あとは痛む部分に薬草を詰めたりしていたようです。抜歯は古くから行われていました。もちろん麻酔などないので、現代のようにスマートには行きませんでした。
歯科治療が基礎医学や臨床理論に基づいて体系づけられるのは、18世紀のフランスのピエール・フォシャールによる世界最初の歯科医学書『外科歯科医、もしくは歯の概論』(Le Chirurgien Dentiste,ou Tratite' des Dents)を待たねばなりません。
初版は1728年に出版され、18年後の1746年に刊行された第2版には、歯周病についても記載されており、歯石取りの重要性を訴えています。
しかし、その当時ヨーロッパでは、歯周疾患に関して、200を超える名称があり、その原因については、局所説と全身説が入り乱れ混乱し、有効な治療法も確立されず、19世紀になっても停滞していました。
 19世紀も後半になって、アメリカのジョン・リッグスが、歯周疾患の進行の特徴(まず歯肉に炎症が出て、次第に骨が進行して歯がグラつき始める)や、局所療法(ブラッシングや歯石取りを徹底する、ポケット内の汚染された部分や炎症を起こした歯肉をかき取る、など)の有効性を報告し、その考え方は大きな影響を与えました。一時、歯周疾患のことは『リッグス病 Riggs' disease』と呼ばれだ時期もあったほどです。しかし、やがてその名称は消えてしまいました。
 同じころ、コッホが感染症は細菌(病原菌)によって起こるということを発見しました。そして、その弟子のウィロビー・D・ミラー歯周疾患においても口の中にいる常在菌の混合感染であるという考え方を確立しました。

このようにして、歯周疾患の基本的な構造が明らかになって、100年余りが過ぎました。100年経っても、歯周病予防におけるブラッシングの重要性は変わっていません。先人たちの苦労を無駄にしないためにも歯みがきの励行に努めましょう。
 

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