誤嚥性肺炎と口腔ケア

  肺炎は、日本人の死因のなかで、ガン、心疾患、脳血管疾患などに次ぐもので、ここ数年は脳血管疾患より多くなっています。高齢者では肺炎の比率が高くなるので高齢化社会の傾向ともいえ、注目度も増してきています。そしてこの高齢者の肺炎はお口の中と密接な関係があります。誤嚥性肺炎と口腔ケア

高齢者の肺炎の多くが(7割以上ともいわれます)誤嚥(ごえん)性肺炎といわれる肺炎です。「誤嚥」とは、食べものや飲みものを飲み込む「嚥下(えんげ)」という動作が正常に働かず、それらのものや唾液、ときには胃液などが誤って気管や気管支内にはいることを言います。このとき、飲食物や唾液に含まれる細菌(主に歯周病の原因菌)が肺まで入り込んで、炎症が起きてしまうのが「誤嚥性肺炎」です。
 誤嚥は、起きて食事をしているときに起きるとは限りません。むしろ誤嚥は夜間に起こりやすいのです。睡眠中、無意識のうちに唾液が気道に流れ込み(不顕性誤嚥)、この場合「咳き込み」や「むせ」などの自覚症状がないので、気づかないで繰り返すうちに、誤嚥性肺炎を起こしてしまうことがあります。このような原因から起こる誤嚥性肺炎は、再発を繰り返すという特徴があり、そのうちに耐性菌が発生し、抗菌薬が効きにくくなってしまうこともある恐ろしい病気です。
 誤嚥が起きたときに、少しでも肺炎のリスクを下げるために重要になってくるのが口腔ケアです。入れ歯のお手入れが十分でなかったり、むし歯や歯周病があったりすると、口の中の細菌が増殖して、誤嚥をしたときに肺炎が起こりやすくなります。反対に高齢者に口腔ケアを行い、歯周病菌などの口内細菌が減少すると肺炎の発症率が下がることも報告されています。
 口腔ケアでは、ブラッシングや入れ歯の洗浄などに加え、口の渇きや、舌苔の付着防止のために、舌と粘膜の清掃も重要です。また嚥下機能を回復させるような運動-具体的には、首や肩、頬、お口まわりの筋肉のほぐしと適度な運動、口の開け閉め、舌の運動(上下左右)、咳払い(むせる練習)など-を行うとさらによいでしょう。
 また、意識障害や重度の嚥下障害などで食べていない方も、放置しておくと細菌の繁殖が進んで、お口の中は汚れていきます。どんな状態にあっても、口腔ケアを忘れないようにしましょう。

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