脱灰と再石灰化

 今回の「脱灰と再石灰化」はこれまでのコラムでも触れてきましたが、虫歯予防について理解するにはとても大切だと考えるので、あらためて取り上げてみました。
脱灰と再石灰化 食べ物を摂ると口の中のむし歯菌は、その中に含まれる糖から酸を作り出します。
その酸が歯の表面を溶かしていきます。これが脱灰であり、歯が溶けているいわば初期の虫歯状態です。
酸が作られているので、このとき口の中は酸性に傾きます。
その後時間が経つと、唾液の中に豊富に含まれるカルシウムやリン酸といった成分が、脱灰によって失われた部分を補充してもとの状態に戻してくれます。自力で初期の虫歯を修復しているのです。 これが再石灰化です。同時に唾液は酸を中和する働きをもち、口の中は中性に近づいていき、脱灰から回復します。
このように私たちは食べ物を摂るたびに、口の中で脱灰と再石灰化を繰り返しています。脱灰の量と再石灰化の量がバランスが取れていれば、歯は健康な状態に保たれます。しかし、甘いものを多く食べるなど脱灰のほうが多くなると、再石灰化による修復が間に合わなくなり、やがて歯に穴があき、むし歯になってしまいます。反対に再石灰化の方が多い場合は、歯はより強く丈夫になります。

虫歯の予防では、この脱灰と再石灰化のバランスを取ることが大切になります。脱灰を少なくし、再石灰化を促進すればむし歯になるのを防げます。そのためには以下が有効です。
・甘いものをたくさん食べない、・間食を減らす、・だらだら食べをしない、・ブラッシングで歯垢を落とし、むし歯菌の活動を抑える、・よく噛んで唾液の分泌を増やす

脱灰と再石灰化のサイクルの中で、食後の歯磨きの時間についても注意が必要です。食後すぐに歯磨きをすると口の中が脱灰(酸性)の状態で歯の表面も溶けやすくなっています。歯ブラシの刺激で歯が削れてしまう恐れもあります。中性に近づく30分~1時間後に歯磨きをするほうがよいかもしれません。

このような脱灰と再石灰化のサイクルについて知ることで、日ごろ予防のために行なっているそれぞれのことに、どのような意味があるのか、おわかりいただけるのではないかと思います。

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