高齢者の口腔ケア 1 高齢者の口の中
我が国の人口の高齢化は諸外国に例を見ない速さで進んでおり、21世紀のなかばには国民の3人に1人が65歳以上という超高齢社会の到来が予測されています。
このコラムをご覧になっている方も、ご自身がそういう年代の方もいれば、身近に高齢者の方がいらっしゃる方も多いと思います。
今回は、そのような方に知っておいてもらいたい高齢者の方のお口の中の状態の話です。
長い間噛むことを繰り返してきた歯は、上下がお互いに接触することで自然に擦り減ってきます。これを咬耗(こうもう)といいます。噛み合わせが悪かったり、歯ぎしりの癖などで、激しく擦り減る場合を除いては大きな問題ではありませんが、冷たいもの、熱いものがしみたりすることもあるので、その場合は歯科医院に相談してください。
また、40歳前後になると、だれでも多かれ少なかれ、加齢現象のひとつとして歯茎がやせてきます。歯周病が原因でもっと早くからやせてくる人もいます。やせて歯茎が下がると、歯のやわらかい象牙質の部分が露出し、その部分がけずれてきます。強くブラッシングするとそれだけで痛めてしまうこともありますし、知覚過敏の原因になることもあります。また、歯茎がやせてくると、歯と歯の間にすき間ができ、食べかすがつまったり、汚れがたまりやすくなります。
もうひとつ大きな変化は唾液の量です。加齢や全身疾患、降圧剤、精神安定剤、睡眠薬など薬の服用が原因で、分泌量が少なくなりがちです。唾液による自浄作用が減少するので、口臭も強くなるし、舌苔も増加するなど、口腔内の衛生状態が悪化します。
そして、歯茎がやせる、唾液が減るなどの条件が重なると、虫歯ができやすくなります。特にやせてしまった歯茎の部分、歯の根元が虫歯になりやすくなります。歯と歯の間の根元などにできた虫歯は、自分ではなかなか見つけにくく、処置が遅れがちです。また細い部分なので、虫歯が神経に達しやすく、処置も難しいものとなります。
いつまでも健康な歯を保つためには、高齢になっても、いっそうお口の中のケアが重要となるわけですが、次回コラムで、高齢者の口腔ケアについて、詳しく書いてみたいと思います。
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