歯周病は 静かに深く進行する
歯周病は、以前は歯槽膿漏といわれることが多かった疾患で、その進行度合いで「歯肉炎」、「歯周炎」とも呼ばれます。読んで字のごとく、歯肉や歯槽骨といった歯の周りの歯周組織が炎症を起こす疾患で、虫歯のように歯そのものを侵す病気ではありません。歯周病はひどくなると歯を失うことになるのですが、最初は痛みもなく、時間をかけて進行するので、処置が遅れがちです。
「歳を取ると歯が抜ける」とよく言われがちですが、必ずしも歳をとると自然に歯が抜けるわけではありません。
歯周病では若いうちに発症していることが多く、若いうちのケアを怠った結果、歳を取って歯を失うということもあるのです。
歯肉に炎症がおこった状態を「歯肉炎」といい、これがもっとも軽度な歯周病です。炎症がおこると歯と歯肉の間の溝(歯肉溝)が深くなります。この深くなった溝を歯周ポケットといい、プラークがたまりやすく、除去しにくいので、歯周病菌にとっては繁殖しやすい格好の棲家となります。しかしこの段階では、歯磨きのとき多少の出血があるとか、歯肉の薄い人であれば知覚過敏の症状が出る程度です。
さらに炎症が深まり、歯と歯肉がくっついている部分まで達して、その付着がはがれてしまう(アタッチメントロス=付着の喪失)と、歯周ポケットはさらに深くなり、健全な状態に回復させるのは非常に困難な状態となります。
歯肉溝の深さは、歯周病の進行と密接に関係しているので、進行の度合いの目安となります。健全な歯肉では、歯肉溝は1~3mmしかありませんが、歯周病が進むと5mm以上、ひどいときには10mm以上にもなることがあります。
歯周ポケットが深くなり、セメント質や、歯根膜といった歯周組織まで炎症が広がると、「歯周炎」と呼ばれる状態となります。そして、もっともひどい状態になると歯の土台骨である歯槽骨を溶かし、土台を失った歯はグラグラになり、やがて抜け落ちてしまいます。
歯周病予防においても、日ごろからブラッシングなどのケアに努めて、プラークを取り除き、必要に応じてプロフェッショナルによるスケーリング等で、健康な歯肉の状態を保つようにします。
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